長官は次元大介

 さて、RIOT ACT(ライオットアクト)
 書こう書こうと思いながら後回しにする内にクリアしてしまった(笑)。

 端的に言うとTPS風味の銃撃アクション。隣接する島々全てが三大犯罪組織に牛耳られそこら中に犯罪者が溢れかえる世紀末的都市で、それら犯罪に対抗すべく人体改造を施し超人的能力で単身潜入・抹殺を試みるエージェントの犯罪撲滅物語。その目的の為には、乗車中の車を強引に拝借しようが、歩道に乗り上げて犯罪者もろとも撥ねて血飛沫まき散らそうが、犯罪撲滅の為にはやむを得ず。いや本当は経験値ペナルティもあるけど微々たる物(FIXされた分は減らないし)で、味方である一般警官からの攻撃も受けてしまうけれど、適当に身を隠せば時効まで僅か数十秒という犯罪者万々歳の法律都市。いやホント、どうしようもない。
 挙げ句、レベルアップ=改造強化の果てに白髪化するわ、幾ら死のうがデータバンクに登録された情報でクローン再生し放題だわと、人権無視も甚だしい。しかも全ての犯罪組織を撲滅した果てには「完全なる統治の前に一度秩序を崩壊させる必要があった」と、長官(?)自ら黒幕宣言するブラックな結末。無論、最後に長官を抹殺しに行くなどという気の利いたイベントは御座いません。あくまでブラック。

 などと舞台設計を見ると本当に救いようのない駄目駄目洋ゲーセンスに充ち満ちてはいるものの、実際それらは重要な部分ではなくて、このゲーム何が面白いって、その超人的能力でもって種々様々に造り込まれた立体都市を縦横無尽に駆けめぐる探検アクションな所。ここは本当に面白い。
 最初はせいぜい常人に毛が生えた程度のジャンプ力で、踏み台を探したり手摺りをよじ登ったりと工夫しながら建物を登っていくのもこれはこれで楽しいけれど、更にレベルアップするにつれ飛躍的に飛距離が増し、屋根から屋根へと飛び移ったり更なる高層ビルの登頂を目指したり、行動の幅が広がって行く様が実に楽しい。
 勿論、それに応じた地形作りも見事な物で、諸々入り組んだ構造は安直なパターンも感じさせず、動き回る楽しみが十分にある。そしてその移動スキルのレベルアップに必要とされるオーブは建物の様々な位置に配置されており(しかも目立つ様に光を発している心配りが良い)、あの手この手を尽くして跳び回る3Dジャンプアクションとしての素養は、自分が「マリオに求めて果たせなかった物」と言ってもいい。又、オーブ回収だけではなく「ルーフトップレース」という地点通過型のタイムアタックレースもあり、これもまた「大ジャンプを上手く繋げていくと目標達成できる」等の作り込みが適度に心地良い。

 尤も、これらジャンプアクション自体はあくまで副次的な物なんだけどね。ゲームのメインは潜入銃撃戦であって、高度なジャンプ性能は自機の行動に幅を持たせる為の物。でもこの潜入探索がこれまた楽しい。
 大抵のボス(組織幹部)は要塞状のアジトに潜んでいて、自機の性能に応じてショートカット出来る潜入路が幾つか用意されつつも、最終的には強引な突破だけではクリアできない設計がきちんと為されている。倉庫に忍び込んだ瞬間にトラックで出口を塞がれて銃弾の雨を浴びたり(柱の陰に隠れて凌ぎながらトラックを爆破して命からがら脱出)、ボスの隠れる洞窟の前にだだっ広い敷地が広がって露骨な待ち伏せ状態だったり(所々の壁の穴に潜みながら進むしかない)と、地形バリエーションやギミックの配置も抜かりなく、ただの一発芸に陥る心配もない。ここは自動回復型アーマーの耐久性のバランスも良く出来ている所で、多少の被弾は気にせず突っ込める(弾薬節約の格闘も可)が、四方を囲まれるとあっと言う間に削られて死ぬ、その案配で強行突破の限界点に折り合いをつけている点が実に上手い。一見して出鱈目なようで、何処を押さえて何処で無茶するかのメリハリはきちんとついている。これを踏まえた散策がまた地形探索物としても興味をそそられる部分。
 強いて言えばボスを殺した後の「帰還」まで視野に入れておきたかった(人体改造なご時世だから脳髄持ち帰って永久処分とかさ)。ボスを倒した後にまだ残ってる雑魚に殺される事も決してない訳じゃないからね。特に下手くそな序盤の頃は、取り敢えずボスに会って殺したはいいけど、帰りに雑魚の集中砲火を浴びたりグレネードであっさり逝ってしまったり(これが多い。状況把握が甘いので)、微妙に「勝利」としては後味の悪い時があったからね。ま、慣れた頃には適度に一掃するクセ付けてたけど。
 ともあれ、こういう人外の能力での地形探索ごっこは、(ブースト飛行こそないけど)Aコアに求めてやまなかった完成度でもあるよなぁ。何とも口惜しい。

 という訳で、見る部分を見ると実に楽しい。
 むしろ18禁レートの部分はドライブ系に集中していて、クリアするだけなら最も不要な部分(カーチェイスがあっても良かったような)。ましてやサブのカーレースでは、故意に逆走ルートを走らされたり、市民のひしめく歩道を突っ切らされたり、血飛沫無しにはこなせない悪趣味っぷりは楽しいどころかむしろ興醒め。繁華街でちょっと派手にショートカットするのが楽しいのであって、人を轢くのが主眼じゃない。ダブルスチールみたいに超反応で道を空けてくれたらどれだけ良かったことか。
 まぁ一応チートモードで市民無しには出来るけどね。経験値が稼げなくなるのと、やはり街が寂しくはなる。
 最近のゲームは本当にNPCも手が込んでいて、まぁ概ねバカで大した事は出来ないけど、それなりにその場の状況に応じて動いてる感じは結構見ていても楽しい。市民に車で近付いたりクラクションを鳴らせば方々に逃げ散る(逃げ方がまたバカっぽくて轢いてしまう事も、、)のは勿論の事、乗っている車ごと持ち上げて反対車線に置いたらきちんと戻ろうとするし、他車と接触しそうになったらきちんと止まる。そんな事を繰り返してると渋滞ですが(笑)。そこでたまにブチ切れて意味不明な蛇行運転で暴走する奴が居たり、事故った現場にパトカーが来たら律儀に停車して降りてきたり。ギャングもギャングで、自機を見付けたら何処かに突っ込んででも車を止めて降りて攻撃開始。ビルの上からも事ある毎に狙ってくるので、そういうのを見付ける度に付近の警官も応戦。そのまま放っておくと意外にも場を収めちゃったりする点が実に微笑ましい。(まぁ、倒した敵を踏み付けて雄叫びを上げたりする点は何とも悪趣味ですがね。一応。無視する方向で。)
 なんかね、人工無能の街、がそこにある訳ですよ。こんな無駄な処理を、と思いつつ(笑)。あくまでオマケのレベルで閉じていて、無駄が無駄として機能している。この細かい所まで力が行き渡ってる、そのパワー配分は流石という他ないのかな。

 そんなこんなで、このマシンパワーとマンパワー(笑)の凝縮感は、何ていうかこれこそ次世代機パワーだなと思わされる。しかもこういうのがゴロゴロしてるっていうのが向こうの国の恐ろしさ。(こういう方面じゃ)もう日本は敵わないよな、と思わされてしまうよ、ホント。いや前から判ってはいたけど目を背けていた現実を目の当たりにしてしまったといいますかね(笑エナイ)。