養分補給

 ふとした気紛れでamazonのお勧め欄を覗いてみたら、鬼頭莫宏の初期作品ヴァンデミエールの翼が再入荷されていたので勢いポチッてみた。10年も前の作品だからとっくに諦めていたけど、2008年6月増刷って何かあったんかな(笑)。

 まぁ別に逐一追っ掛けるほど”もひろん”ファンでも無かろうと思うんだけど、「ぼくらの」は5・6巻辺りまでの話が結構クリティカルだったもので。ただそれ以後の社会編とでもいった展開は、まぁ物語全体の構成を考える意味でチャレンジしてみたかったというのもあるのだろうけど、中心に置かれている筈の少年少女個人の印象が薄まってしまっているのが正直なところ非常に残念。作品人気故か(?)徐々にページ数が増していって、キャラ描写とストーリー・背景描写との比重が偏ってきているのも災いしているのかなとは思うけど。
 その点、この「ヴァンデミエールの翼」は何とも久々に「もひろんっぽい(笑)」。原点に立ち帰った気分、って実際そうなんですが。
 話としては、ヴァンデミエールと呼称される女性型自律胴人形(シリーズ)、要するに「女の子アンドロイド」、そういう事です。テーマはアイデンティティ等と言われる通り、まぁ深層心理を勘ぐられそうなので余計な事はあまり言いませんが(ぉ)、そういった題材が19世紀風近代ファンタジーの世界で語られるちょっぴり切ない系の作品イメージは、元々自分の領分。尤もこういうのは最近は微妙に感じる物が多いけれど、これは何より数十Pの一話完結のボリューム故に、余計な邪念を生む前に消化吸収される手頃な濃度なのだと思う。元々煽り煽られの演出とは無縁の人だし、いわゆる「えげつない」要素を好みがちな人ではあるけれど別にそれを目的としている訳ではないので、同じ趣味モノでも落とし所、全体のバランスが上手いのかなぁとは思う。

 まぁ正直な話、初期の作品なのでテーマ表現の完成度にしても今の方がレベルは上がっているとは思う。あくまで路線的な懐かしさという事で、一応。
 しかしまぁいきなり格闘アクションとか始まった時はどうしたものかと(笑)。片や曲芸団の珍妙コスプレ、片やメガネ神父。最近の路線に慣れきっていたのでちょっと意外なモノを見た気分でしたが。ともあれそんな火葬シリーズが一番好みでした、キャラ半分で(笑)。