遅ればせながら、「ヨコハマ買い出し紀行」小説版が出ていた事に気付き早速読んでみた。
嗚呼、相変わらず良い色してますね。この色遣いが好きなんだよなぁ。「紅の山」とか、たまのフルカラー短編はどれも味わい深かったし。携帯サイトから拾ってきた「冬のおわり」の表紙絵が気に入りすぎて今の携帯を手放せない(コピー不可)原因の一つになっている気がしなくもない事はココだけの話にさせて下さいお願いします(何)。
さてこの小説版は、夕凪の時代の更に後の時代に、地上最後のロボット・オメガ君が眠りについたアルファさんの記憶にアクセスするという所から始まる話。
しかし、
「2007年日本ホラー小説大賞最終候補作品」って、、マテ!(笑)
つまるところ、原作がベースにしている「終末の時代」の要素を重点的に描いたお話になっていて、元を知らない人間からすれば何がヨコハマ買い出しなのかもさっぱり分からないくらい、元来の「てろてろ」な部分は含まれていないのでその旨あしからず。まぁ牧歌的な部分がバッサリ切られたターンA劇場版のように、それが全てではないけれどもちょっと寂しくはあるという感じで。どっちかというと、最終巻で加速した切なさパートを凝縮したものと思って貰えば良いかと。切なさ10倍くらい。
その点、一冊という紙面の都合もあって諸々再構成されてはいるけれど(ココネもマッキも出ません。ファンは残念!)、オリジナルの表現を含めつつも個々の帰結する所は変わらず上手くまとめてきたなぁという印象。単純なノベライズでもなく、原作から逸脱する事もなく、適度なアレンジなのでファンでも安心できるのではないかと。まぁ巻末に読み切りの短編が収録されているというだけでファン的には買いなのかな(笑)。
・・・とまぁ書いてはみたけど何とも奥歯に物が挟まったような気分が拭えなかったので再考していたら日が経ってしまいました。最近こんなんばっかだなぁ(苦笑)。
まぁ正直、この作品については(いつも以上に)何がどうだと断定し辛いところがあるのですよ。
元々断片的に語られた要素から全体を組み上げていくタイプの作品なので、自分の場合はそれらSF的要素から形成された特殊空間上での人物の心象風景を愉しむ作品というスタンス。ただ中にはそのSF設定を更に掘り下げたいと思う人間も居る訳で、この小説版もそれを立脚点にした構成である点は否めない。その原作以上に「終末」の色の濃い世界設定(及び主題)がホラー扱いされたという訳で。
しかしそのような「設定」を殊更に追い求める流れは、正直(この作品に限った事ではなく)自分はあまり好まないほう。設定解説に溺れて駄作に成り下がった作品も見てきたし、何より連載という形式故に発生しがちな不整合、これに関して既知の要素にこじつけていくだけの辻褄合わせの行為はただの不毛な作業だとすら思ってしまうのが本音。勿論、ファンの心理としてより完成された姿を求めたいという欲求が先立っているのは承知していますが、この点小説版は連載終了後の強みとして全てを総括して再構築を行っているので、無理なく自然な補強が出来ているとは言える。そうしてSF的背景を整え、それに合わせて各種エピソードを再構成した作りこそがこの小説版というものではないかと。
こうした「改編」はファンジンには成し得ない公式出版の強みであって、公式のアレンジ版としては十分にその役を果たしているのではないかとは思う訳ですよ。この点個人的にはロクなアレンジを見てきていないのもあるんだけど。手前味噌に書き換えて、筋道が違えばそれがアレンジだと思い込んでいるようないわゆる原作レイプに比べれば、よっぽど正しく原作を理解して取り組まれているのではないかと(少なくともOVA二期の微妙なズレ具合よりはいいかなと)。別に悪くなかれ主義になる訳ではないけど、褒めるべき所は素直に褒めたいとは思う。
まぁそんな感じなので、私的に手放しに歓迎できる訳でもないんだけど、否定するべくもないよなぁという。むしろこの内容にしては「ホッとした」という所。
ただ強いて言えばやはり、7章の語り、いわゆる「設定解説」パートは相当にくどい。
これを取って「自作設定集」扱いされるのも無理はないし、これこそが先に挙げた設定好きの悪い癖。ここは減点10の要反省としか言いようがない。
ただまぁそこで重要なのは、あの事実を持ってしてアルファさんがその時そしてそれ以後に何を感じ得るかという部分なので、まだ辛うじて許容範囲。原作では直に触れてない部分(どちらかと言えばココネ担当かな)としてはまた一つの話の切っ掛けにもなろうかとは思えるし。
しかしやはり同じ話をするにしても、原作であればもっと言葉少なに巧みに語るのだろうな、とは釘を刺しておきますけど。