TFアニメイテッド本国版

 TFアニメイテッド
 始まったばかりでネガキャンみたくなるのもどうかと静観するつもりでいたけれど、正直な所を言うと「これでおしまい?」な物足りなさを感じていたのも事実。各話の区切りが尻切れトンボっぽいし、内容的にもあっさりしすぎの感が否めない。
 シーンカットがあるとは聞いていたので、2話まで見た時点で微妙に堪りかねて本国版を見てみた。
 「やばい、本国版面白ぇ」
 まあね、、、結局そういうことですよ(苦笑)。

 元々1~3話は90分のスペシャル版をバラしたものなので各話の繋ぎが弱くなるのはしょうがない。しかしそれ以上に至る所でシーンがカットされていて、よりにもよって「これを削るか?」的な物ばかり。尺合わせの細かいカットは昔からあるものだけれど、今回はカットしたが故に本来成り立っている会話の組み立てが端々で崩壊しているものだから、そりゃ内容が薄くなって当然ですよと。
 幾つか例を挙げてみると、

・オプティマスはサイバトロンアカデミー出身
 スペースブリッジの誤作動?を一人で鎮めたシーンの直後、その優秀さを皆に問われ「昔アカデミーに居た」「そんなエリートが何故に辺境の修理部隊に?」というやり取りが為される。本来はこれを受けてセンチネルプライムに「一介の岩砕きが何の用だ?」と茶化されるシーンに繋がるところ。こういったキャラクターのオリジンを描くシーンをいきなりカットとはね。省略されても察しが付く範囲だとはいえ、元々あるものを敢えて分かり辛くする理由もないだろうに。
 更に言うと、この辺りで彼等は辺境のスペースブリッジの修理に来ていてオプティマスはその小隊長だという状況設定が会話の端々から読み取れるようになっている筈なのに、日本版では諸々カット&どうでもいい台詞に置き換えられていてまるで状況が読めなかった。

・気難しい老兵ラチェット
 同じくスペースブリッジのシーンで、身勝手な若造を嘆くラチェットと、そのご老体ぶりを茶化すバンブル、「聞こえてるぞ」と怒られる一連のシーンがカット。日本版では穏和なおっちゃんのイメージで描かれていたラチェットだけれど、本国版では典型的な爺さんキャラだったようで。
 更にこれを受けて2話の出撃シーンで、「老体は邪魔だろう」「機嫌直さない?」「No」、と続いて頑固ジジイっぷりを固めてくれる訳ですが。日本版では前者がカットされているので全く無意味なやり取りに変換。
 そして警察集団と対面する所で、サリの「赤白の人は気難しいけど」という台詞にも繋がってくるところ、日本版は事前の流れがすっぽ抜けているので一体こいつは何を言っているのかと(苦笑)。本国版を見てようやく納得した次第。

・スタースクリームの「俺様がニューリーダー」宣言
 メガトロンを爆弾で吹っ飛ばした後のスタスクお約束のニューリーダー宣言。どうしてこのシーンがカットされるのかはっきり言って理解に苦しむ。
 「俺様がニューリーダーだ」→誰も聞いてない→スペースブリッジの爆発が迫る→「Nooooooo」のシーンはスタースクリームのへっぽこキャラクターを決定づける重要なシーンではないのかと。
 更にこの後「やっと見付けたぜ」的に戻ってくるスタースクリームのシーンもあるんだけど、これまたカットされたのか3話に持ち越しなのかは微妙な線。50年間、船を直さずに一人飛び続けるというTFらしい無頓着っぷり(400万年生きるような種族なんで)も、そもそも吹っ飛んだシーンが抜けているので話が繋がらないだろうしね、、。

・原生生物(lifeform)
 「この星の原生生物(lifeform)をスキャン」して化け物退治に出撃、無人ドローン相手に「誰も喋れないのか?」、とTFらしい機械生命体基準のやり取りがあるのだけれど、やっぱりこれもカット&改変。
 でもって、「あの四つ足(犬ロボ)があんなでかいの(サリ=人間の女の子)をペットにするのか?」と繋がるところ、またも前フリがすっ飛ばされているので何だかなという。

 ついでに言うとここの戦闘シーンはもっと長くて、それを見た警部が「俺の車が!?」「というか誰も乗ってないぞ?」とかの細かい小ネタも一杯あるのに、それらが諸々削られちゃってる訳ですよ。警部の車がバンブルのスキャン元だという描写自体が全カットだし。

 いやはや、これだけ片っ端から削りまくられればそりゃ物足りなくもなりますよ、と(苦笑)。参ったね。

 そもそも海外版の辛い所として「台詞が少なすぎる(余計な台詞が一切無い)」というのがあって、その寂しさを補う為に日本版では政宗ナレーションを筆頭に台詞の追加が至る所で行われていた経緯は昔からあった訳ですが。しかしそこで元の脚本を蔑ろにするような改変まで行われていたとは思っていなかったのだけれどね。
 特に最近はオリジナルの映像も容易に手に入るので視聴者の視線も厳しくなっている訳で、それを踏まえた翻訳作業というのが為される時代になってきたのではないかと、勝手に期待していた側面もあるんですが、ここまで容赦なく、ねぇ。

 ここで問題にしているのは「此処が違う」云々という話ではなく、本来盛り込まれている作品内容を最低限再現出来ていないというところ。特に上に示したように会話の改編が顕著な訳だけれど、「端々の台詞が折り重なってキャラクター及び作品世界が構築される」という脚本作りの基本事項をここまで蔑ろにされると泣くに泣けない。
 ぶっちゃけ今作はビーストウォーズ同様におちゃらけアレンジ路線を目論んでいる訳ですが、それにしたって旧作のように元々無い部分で付け足したり、他愛の無い部分を捻ったり、そういう弄り方に留めるのがプロの仕事だろうと思い込むようにしていたつもりですが。結局、分かっちゃいたけどただ下世話に上っ面なコメント改変でその場の茶化し作業に専念しているだけなのだと。悪く言うとそれ以外にない。
 まぁどう言い繕ったところでビーストウォーズリターンズであれだけの下衆っぷりを披露してくれたスタッフは所詮こんなものということです。(2chの風評に目くじら立てて商品仕様決めるような人間だからね、、、。プロとしてやっていいことと悪いことがある。) ここまでスカスカにしといて「原作が楽しくないのでアレンジしました」とか言えた義理じゃない。

 うーん、下手に書いてもアンチBWとしか思われないんで控えたかったけど、どうにも止まりませんでした。
 おちゃらけアレンジとかはまだいいんですよ、とにかく「原作本来のレベルは維持しろ」と。
 Cartoonってこんなスカスカなの?と思った人は本国版見て欲しいですわ、ホント。

 まぁ今回に限らず、TFの日本版展開は昔からメタメタなんで。
 正直もうオリジナル性ってのは諦めていて。こういうのは当分は版権持ちに引っ張られちゃうので、10年後20年後の忘れられた頃に、スーパードラマTVと東北新社が字幕版(今はそれすらもない)や、カットシーンを字幕で足した「完全版」を作ってくれるのを願うのみです、はい。