液タブ縦置き・その後

 さてはて。
 ちょっくら一昔に書いたネタの補足訂正というか経過報告的なことをしておこうかと。
 以前に書いた「液タブ縦置き」のお話。
 結論から言うと「素直に大きなタブレットを買いましょう」という所になりますが、以下もう少し掘り下げて。

●前提
 尚、まず大前提として、自分はあくまで日曜お絵描き(練習は大体毎日してるけど、、)なので「デスクに大型タブレットを据え置くような使い方は出来ない」という点。本業がありますしね、特にリモートなこのご時世。
 事務用とお絵描き用で机を二席分用意できれば別だけれど、仮にスペースや金銭の問題を抜きにしても流石にそこまで覚悟も決められない訳で(汗)。
 よって、あくまで「使う時に繋ぐ(使わない時はどかす)」という前提で小型液晶モデルを選んで使っている人間のお話です。

●縦置き使用の限界
 風景画はともかく一般的なキャラ絵の場合は縦長比率の絵になりやすいので、横長ワイド16:9の液晶だと縦方向に不足を感じる一方で横方向の領域は持て余している。そこでタブレットをぐるっと90度横向きにして使ってみたというのが以前のお話
 しかし当時も書いていたように実際はドローソフト側が縦置きを想定していないので、各種操作パネルの収まりがどうしても悪くなってしまう。

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 この横向きレイアウトを、

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 この左のように元の向きのまま90度回せれば領域を余すことなく使える訳だけれど、
 実際には右のように各パネルをフロートで分散配置させるのが精々で、幾つかのパネルはどうしても縦方向に伸ばさざるを得ないのが実情。適当に縦を縮めているので実際は適宜引き伸ばす等の操作も入ってくる。

 勿論パネルは常時操作する訳ではないので、ショートカットキーを駆使するなどして必要な時に表示・非表示させるのも一案ではある。しかしその場合の難点として、「閉じていると状態すら分からなくなる」「一々開いて閉じるという操作が億劫になる」といった問題がある。
 この辺りは、昨今のスマホ・タブレット向けアプリケーションのような省スペースを前提としてデザインされたソフトとそうでないものとの違い。
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 例えば、普段は最低限のステータスアイコンだけが表示されていて、アイコンクリックでパネルオープン、操作を終える(画面外を叩く等)と閉じるという操作が落とし所になってくるのではないかと思う。

 この点、PC向けドローソフトの操作パネルは状態表示と選択操作を兼ねているのが実情で、ペン状態を表示するだけでもどんと大きなウィンドウを配置せざるを得ない。(多少の差はあるけれどクリスタもSAIも本質は同様)
 そして仮に表示オンオフして使うにせよ、「出して、操作して、また閉じる」というこの3アクションの特に最後が地味に億劫になりがちで、結局は表示しっぱなしでそのまませせこましく残りの画面領域で作業するといった使い方に陥り易い。

 また一方、下手にパネルを非表示にしてしまうと「使うべき物も使わなくなってしまう」というのも現実問題として発生しがち。手の届く所に道具がないと存在を忘れてしまうというか、悪い意味で見えている範囲の作業に収束してしまいかねない。
 当時調べた際にはかなりガチガチにレイアウトを厳選して操作しているような使い方の人を見掛けたけれど、つまりよっぽど作業がパターン化出来ていれば操作を最適化して使うことは出来るものの、自分のようにまだあれやこれやと試行錯誤しながら使っていく身では、各種パネルは最低限表示させておかないといつまで経っても活用出来ずじまいになると。

 こういった所から、「パネルを引っ込めて使うのは非現実的」=「パネルを全て表示させる為には素直に大きなタブレットを買うしかない」という結論に至ったというところ。
 というか液晶がまだまだ高かった昔と違って、今ではどんどん大型液晶モデルも出ているので、そもそも13inchがラインナップから消えて行きそうな。16inchが今後の最低ラインになるのでは。

●16inch(Wacom Cintiq16)
 そこで一つ考えたのが、13inchから16inchにワンランク上げて、その物理的に広がったL字領域部分に上手いことパネルを分散配置できないかと。縦が必要な物はサイドに置く等。
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(※注:端数は省略した概算。実際は15.6と13.3なので差はもっと少ないです。)
 良いんじゃないかと思ったんですけどね、でもね、
 「Cintiq16の底面が斜めになっている」という最大級のトラップにやられました(笑)。

 奥側は太く取りつつも手前側は薄くした斜めカット筐体。うーん、こう来たかと。
 かつて一時期のノートPCでも何処かがやっていたかもしれない、全体を薄くは出来ないからせめてものという、技術的過渡期の発想という感じ。
 まぁ実際、縦置きなんて1ミリも考慮されていない勝手な使い方であって、横向きで普通に使うなら何も問題ない筐体設計ではある訳で。

 もしどうしても縦置きに拘るなら傾斜も考慮した上での縦置き用スタンドを自前でこしらえるって話ですが、流石にそこまでは、、。そんな訳で無事轟沈。(試しに適当にやってみたらまぁサイズ感は期待通り、悪くなさそうだったんですけどね)

 ただまぁ実際13inchだと明らかに縦に狭かったものが数センチ伸びるだけでも大分違うので(尚且つ縦方向を占有するバーは殆ど取っ払ってで)、まぁ横向き使用でいいかなと。

 そんな訳で、Cintiq 13HDから(新)Cintiq16に微妙にクラスチェンジしましたというお話。
 流石にProは手が出なかった。高解像度やusb-c接続ですっきりさせたかったのもあるけれど、実際なんだか安定してないって話もあって、その内改良モデルが出るんじゃないのくらいの空気だったし。勿論金銭的にも、自分にゃ過ぎた代物だという話もありますので(汗)。
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 13inch最後に描いたものと16inchで描いたものと。別に違いは、うん。
 画面の広さ以外にもペン解像度も倍に上がっている筈ですが、自分如きにそんな違いが分かる訳ないじゃないですかー(苦笑)。
 いやまぁ最初は「何か描きやすくなったかも」みたいな錯覚もありましたが。すぐに圧倒的下手くその渦に呑み込まれて違いなどとうに消え失せましたよ、はい(大汗)。

●余談:20inch(Huion Kamvas Pro20)
 えーっとですね、因みに言うとその前にもう一つ中華タブを試してはいました。いました(過去形)。
 横向き使用の方が無難なのは分かっていたので、ギリギリ設置して使えそうなサイズとして19~20inch。
 wacomのラインナップからは消えてしまっているラインなので、隙間産業としての中華タブも試してみようと。Huion製のKamvas Pro20。19.5inch。
 うん、はい、安物買いの銭失いでしたね(苦笑)。

 ぶっちゃけ描き味とかは語れるほど使う前にとっとと止めたのでそういう話は出来かねますが、まず液晶があまりにも酷すぎる点と、やはりドライバが良くないという点。
 液晶はもう何というか、10年以上前のビジネス用PCレベルかそれ以下。今時こんな安物どっから仕入れてきた、と嘆きたくなるほど。「こういうコストカットをするかぁ」という凄まじい幻滅感。
 発色の悪さは勿論、色合いの合わない所は色設定で多少誤魔化すにせよ、どうにもならないのが視野角。ちょっと斜め方向から見るだけでもう駄目。ばっちり液晶画面と垂直に正対して使いましょうと。原稿の斜め歪み問題の解決にもなりますね。いやそうじゃねーよと。

 そして恐らくはドライバ周りの酷い遅延。
 軽く描く分には普通のレスポンスだったりはするけれど、酷い時は描画ストロークがめっさ溜まって遅延する。特に消しゴムシフトを多用した時に起こり易かった。ドローソフト側は複数で確認したし、またPCも2台で確認してどちらでも同現象なので、根本のドライバ側の問題だと思う。
 そもそもwacomで普通に使える消しゴムモードシフトは存在しなくて、ペン・消しゴムのトグル切り替えしか出来ない。代わりにデフォルトで設定されているのが「Eキー入力」。これをソフト側のツールシフト機能で消しゴム切り替えとして使ってねという逃げの実装。この時点でドライバの出来としてはまだまだなのだろうなと。

 まぁ液晶にしてもドライバにしても話には聞いていた通り。
 妥協出来るかなとも思ってたけど実際に目の当たりにすると、自分は「無理に使うことはないかな」という気持ち。
 例えるならお小遣いの無い小学生が買っちゃったクソゲーを我慢して遊び続けるような真似は、流石に大人になってからすることではないですねと(苦笑)。

 そもそも、中華製廉価タブレットのお陰でwacomが重い腰を上げて廉価モデルを出すようになってきたところなので、だったらwacomでいいんじゃないですかね?と。
 XP-Penはどうか分かりませんが、サイズラインナップの都合上、選択肢には乗らず。
 自分はどうしても19inchを試してみたかったので、駄目元ではあったのだけれども。
 何よりあそこまで酷い液晶を使うというコストカットの仕方に、機材作りとしての誠実さが見えないので自分としては論外かなと。
 この点、wacomの廉価モデルは「成る程色々削ったね」というのが多々見えはするものの、一番重要な液晶タブレット部分の品質は保っている。ここを落としたら駄目というのを弁えているのは老舗の貫禄かなと。

 という訳で何とか給付金(の一部)は無事海外企業の売上に吸われてしまいましたという報告でした(苦笑)。